京生き物ミュージアム

東山の森づくり

・京都伝統文化の森推進協議会
・東山での取組
・もっと詳しく知りたい方へ

京都伝統文化の森推進協議会

 京都の市街地は、東山、北山、西山の「京都三山」に囲まれています。京都三山は、いのちの源となる水や薪炭材などの資源をもたらし、麓では信仰空間が形成され、山紫水明の景観が人々の美意識を支えてきました。平安京以来、1200年の歴史と文化を育んできたといえます。

京都三山の概略位置図

 しかし今、ゲリラ豪雨などの異常気象、シカによる食害や病害虫の被害などで、荒廃した場所が多くあります。さらに社会環境の変化で、十分に整備されていない森林も増えました。

台風被害を受けた林内

シカの食害を受けた林内

ナラ枯れした森林

手入れ不足の林内

 「京都伝統文化の森推進協議会」は、京都の文化を支える京都三山が、いつの時代においても豊かで健全であり続けるよう、美しい景観に向けた森づくりや、森林の文化的な価値を発信する取り組みを続けています。
 京都伝統文化の森推進協議会は、地域と学識者、寺社、企業、行政等が参画し、2007(平成19)年に設立しました。

東山での取組

東山との関わり

 比叡山から伏見稲荷大社がある稲荷山に至る東山三十六峰の山々とその麓を範囲とする「東山」。このエリアには、室町時代の東山文化を代表する銀閣寺や修学院離宮、五山の送り火の一つの「大文字」、桓武天皇が築いた将軍塚、清水の舞台で有名な清水寺など、多くの名所・旧跡が連なり、多くの伝統と文化を育んできました。
 京都一周トレイルの東山コースや多くの登山道もあり、近年は京都の歴史文化を味わうことができるハイキングコースとしても、国内外から多くの人が訪れる場所となっています。

高台寺借景

清水寺借景

清水の舞台と東山

霊山観音

 しかし今、倒木や森林病害虫の被害を受けた箇所が少なくありません。京都伝統文化の森推進協議会の主な活動フィールドである高台寺山では、このように倒木や森林病害虫の被害を受けた跡地にシイという常緑広葉樹が鬱蒼と茂り、林内は暗く、不法投棄も目立ちます。

林内のゴミ

 この状態を放置すれば、人々が山に親しみを感じなくなり、京都らしい山紫水明の景観も損なわれてしまいます。そこで、この場所を起点に健全な森林に回復させ、人々との距離が再び縮まり、京都の文化を次世代にしっかりつなげる森づくりを進めたいと思います。

森づくりの進め方

 森林の機能は様々ですが、「生物多様性の回復」の視点からは、景観として美しく、多様な生きものを育む植栽を心がけています。春には森を彩る花木、夏には緑豊かな広葉樹、秋には鮮やかに色付く落葉樹、冬には雪に映える針葉樹、鳥たちの好む実を付ける樹木など、様々な樹種を組み合わせることで、四季折々に表情を変える魅力的な景観が育まれます。
 そして、そのように形作られた多様な植生の森は、多様な昆虫や鳥、小動物たちの棲み処となります。様々な環境が混在すること、そして生きものたちの餌となる木の実や草花などが育つことで、生物多様性の高い森を維持することができます。
 本来の森としての機能を守りながら京都の町に相応しい景観を再生します。

 

今後の進め方

 森の「いのち」を守ることは、生きものが住みやすい環境を作り出すことです。それは、巡りめぐって、京都の文化を守ることに繋がります。

イメージ図

 森づくり施業だけでなく、京都の森と文化の繋がりを楽しく学べるセミナーの開催などを通じ、より多くの人々に、さまざまな生物が育まれる森づくりに少しでも関心を持っていただけるよう取り組んでまいります。

東山風景林(円山公園)

もっと詳しく知りたい方へ

 私たちの取組やイベント情報などについて、ホームページにて紹介しています。

 ホームページ

東山の森づくりによる生物多様性保全

 京都市が令和3年に策定した「京都市生物多様性プラン(2021-2030)」では、令和12年(2030年)までの4つの目標を掲げています。「東山の森づくり」は、特に目標1「京都らしさを支える生物多様性の持続可能な利用を図る」の施策「文化を支える生物資源の持続可能な利用」及び目標2「生息・生育地と種の多様性を保全・回復する」の施策「里地里山の保全・回復」に大きく貢献する活動です。 また、関連する取組を一体的に進め、相乗効果を図る「推進プロジェクト」にある「恵み豊かな森づくりプロジェクト」の一つとして推進しています。

 京都市生物多様性プラン(2021-2030)

京都市生物多様性プラン(2021-2030)