京生き物ミュージアム

京都のまちと自然との関わり

カルガモ 葉っぱ

 緑豊かな山々や,鴨川や桂川をはじめとする清流の恵みを受けながら,鮮やかに季節が移ろう京都は,人と自然が一体となった自然観を有し,自然を尊重するとともに,自然と共生する暮らしの中で多様な文化を形成してきました。

・食文化
・茶道・華道
・祭事・伝統行事
・景観
・社寺の緑

食文化

 本市は,消費地である都市部と生産地である農村部が近接し,食を通じた循環を作り出し,仏教思想とも相まって,「京野菜」をはじめ,野菜を中心とした食文化が育まれてきました。また,河川に生息しているアユやウナギなどの淡水魚も,京料理に欠かせない存在として用いられてきました。
 自然と暮らしが調和する京都において,人々は,「いただきます」,「ごちそうさま」といった,自然,命や食に関わる人への感謝,食べ物を「もったいない」と思う気持ち,食材を無駄なく大切に使う「しまつの心」を大切にしてきました。
 さらには,おもいやりとおもてなしの心で,器,床の間,美術工芸品や庭園などのしつらえと併せ,季節感を愉しみ,五感で食を味わってきました。

食文化1食文化2

茶道・華道

 茶の湯や生け花は,漆器や陶磁器,木竹工芸品等の生産と相まって,季節感やおもてなしの心といった精神文化を暮らしの中に浸透させていきました。二十四節気をはじめとする季節の移ろいを大切にする精神性の下に育まれた和菓子は,茶の湯の発展とともに洗練を極め,旬の素材を使うだけでなく,意匠で季節を先取りして表現するものとなりました。
 また,茶道・華道の道具,装飾品や着物等に対する芸術も自然に由来しています。例えば着物の文様は,自然と深く関わり,季節感を大事にしてきた日本人の感覚,和の心が色濃く反映され,色や柄の中に,四季の自然を様々に写しており,日本特有の表現が多く見られます。

茶道・華道1茶道・華道2

祭事・伝統行事

 京都三大祭りの一つである祇園祭においては,「チマキザサ」が,厄除けとして授与される ちまき に使われています。
 ほかにも,葵祭では,神と人を結ぶ神聖な植物として,「フタバアオイ」,「カツラ」が行列の装束や牛車などに使われており,「アカマツ」は五山の送り火の燃料に,「オケラ」は無病息災を願う「 白朮 おけら 詣り」に,「コバノミツバツツジ」は鞍馬の火祭の 松明 たいまつ に使用されています。

祭事・伝統行事1
祭事・伝統行事2
祭事・伝統行事3
祭事・伝統行事4
祭事・伝統行事5
祭事・伝統行事5

景観

 京都の山々は日本庭園の背景に取り入れる「借景」として利用されています。特に,東山や嵐山は景勝地として知られており,多くの観光客が訪れます。
 また,川沿いの風情は,癒しの空間としても,人の心に豊かさを与えています。

景観1
景観2
景観3

社寺の緑

  ただす の森や醍醐寺の森など,市街地にある社寺の緑は,身近な自然との触れ合いの場となるばかりでなく,生きもののすみかとして,生物多様性保全に資するとともに,京都ならではの自然環境を形作る重要な要素として,観光資源にもなっています。

社寺の緑1
社寺の緑2
社寺の緑3

 このように京都の伝統,文化,産業や景観は,四季の変化に富んだ豊かな風土により育まれてきたものであり,生物多様性は「京都らしさ」を支える基盤となっています。
 しかし,近年では,里地里山の手入れ不足などにより,かつて京都で当たり前に見られ,利用してきた生きものが減少し,他の地域からの供給に頼らざるを得ない例もあります。
 京都において生物多様性が失われることは,同時に,京都が「京都らしさ」を失うことにもつながる由々しき問題でもあります。