平成29(2017)年1月27日
大原のオオムラサキを守る会
「大原のオオムラサキを守る会」では,以前に当リレーコラムで紹介した「大原のオオムラサキの保護活動」以外にも,源氏物語に登場するフジバカマの育成に取り組んでいます。このフジバカマには,アサギマダラというチョウが好んで蜜を吸いにやって来ることが知られています。
アサギマダラは旅するチョウです。春は南から北へ,秋になると北から南へ,日本列島を移動します。
秋の移動シーズンには,各地に植えられたフジバカマにたくさんやって来て,群れ飛ぶことがあります。2016年10月,京都市左京区大原に植えたフジバカマへも,たくさんのアサギマダラがやって来ました。大原に植えてから10年目のことでした。
私たちは,2016年10月7日~20日,アサギマダラの飛来経路を観察するために,マーキング(標識)調査(※1)を実施しました。その結果は表1のとおりです。
全標識数は554頭。その中に,すでに標識されていたアサギマダラが9頭いました。その標識から,福島県,群馬県,富山県などから飛んできたことが分かりました。
そして,標識して放した554頭のアサギマダラのうち,14頭が,愛媛県,高知県,和歌山県などの別の場所で再び捕らえられました(再捕獲)。
図1は,アサギマダラの大原への移動と,大原からの移動の様子を示したものです。図1を見ると,秋の移動では,アサギマダラは南西方向に飛んでいくことが分かります。例年なら,この方角の先にある南西諸島や台湾でも再捕獲されるのですが,この年はそちらへの風があまり吹かなかったようです。
再捕獲されたアサギマダラは,再び標識して放されますが,それがまた捕らえられることが稀にあります(再々捕獲)。昨年の調査では,大原が中継点となって,再々捕獲された例が一つありました。9月27日に富山県黒部市で標識された個体が,10月12日に大原で再捕獲され,次に11月12日に高知県室戸市で再々捕獲されたのです。全行程46日間,500kmの旅でした。
アサギマダラの不思議な旅の様子は,1981年から始まったマーキング調査で少しずつ分かってきています。あなたも調査に参加しませんか。
※1 アサギマダラのマーキングは,極細油性マーカーで,はねの裏に,「いつ・だれが・どこで」放したのかが分かるように,アルファベットなどで簡潔に書きます(表1の「飛来再捕獲の標識」参照)。